全額返金のがん保険「がん診断保険R」のデメリットを暴く

「使わなかった保険料が戻ってくる”新しいカタチのがん保険”」
というキャッチフレーズで販売されている東京海上日動あんしん生命の「がん診断保険R」。がんと診断されたらまとまった一時金が支払われる診断給付が主契約の保険です。
大きな特徴は「一度もがんにならなかったら全額返金」されることです。

「がんにならなかったら全額戻ってくるなら、掛け捨て保険よりめちゃくちゃ良いじゃん!」
と思っちゃいますよね。私も一瞬そう思ってしまったので、なかなかよく作られています。
しかし保険商品である以上、企業はこれでも利益を得ているのです。そのカラクリを暴きます。

この保険に30歳で加入したケースで考えてみよう。診断給付100万のみオプションなしの場合、月々の保険料は3760円。70歳で返ってくるお金は3760円×12ヶ月×40年の1,804,800円です。約180万円が戻ってきます。

がん診断保険Rのデメリット

この保険でメリットがないケースがあります。
・1回だけがんになった人
・途中でやめてしまった人

・“所定の年齢”以後(老後)

です。詳しく説明しよう。

一度だけがんになった場合

もし70歳までに1度だけガンになった場合。そこで一度100万円が支払われます。この場合、70歳の時点での返金額は払込総額から100万を除外された804,800円です。

「がんになってもお金が返って来るなんて、ありがたい!」

じゃないいんですよ。
つまりコレ、自分の貯金から100万円使ったのと同じこと。デメリットというか、メリットがないんですよね。全然「保険」じゃない。
保険って少ない掛け金で自分の支払った掛け金以上の高額な給付がメリットのはず。
なのでこの保険の場合、2回以上がんと診断され100万円を2回以上受け取らなければメリットがない。しかも2回だけだと200万。内約180万(70歳までに払う掛け金総額)は自分の払い込んだ金額。得するのはたった20万円です。保険というにはしょぼい。そうなるとせめて3回以上がんになって300万くらい受けとらないと「入ってて良かった♡」にはならないよね。実際がんになった時のメリットを享受しにくいのがこの保険のデメリットです。

途中でやめてしまった場合は保険会社の養分に

「70歳まで払い続けがんにならなかったら全額返金」

これ、裏を介せば途中でやめてしまったらほぼ没収です。掛け捨てと変わりません。もし30歳で加入したら40年、かなり長いです。続けられる自信はありますか?

貯金だと思って続けるという考えでもいいかもですが、まるで利子がつかない貯金です。であれば銀行に預けたほうがまだ僅かに利子がつくし、もしくはそのお金を投資に回したらもっと増やせる可能性も。

掛け金がアホほど高いのもデメリット

この保険は返金制度があるため似た条件の掛け捨て保険より掛け金が高い。例えば掛け捨て保険なら1440円なので(後述)、3760円はざっくり2倍以上です。
これにより大きなデメリットが2つあります。
①途中でやめた場合のダメージが、掛け捨て保険と比較するとデカい。
②“所定の年齢”(70歳)以降は、その高い掛け金で掛け捨てで毎月支払うことになる。出費を控えたい老後に高い掛け金を終身払うことになるのは大きなデメリットです。

▼掛け捨てがん保険の代表商品「勇気のお守り」なら診断給付100万円の掛け金は1440円です。(30歳で加入オプションなしの場合)

しかも「がん診断保険R」の場合、診断給付の条件は2年に1回が限度になっていますが「勇気のお守り」は1年に1回と条件が良い。比較するのであれば「勇気のお守り」の50万円給付型との比較が妥当とも考えられます。例えばがん治療が1年以上(2年未満)続いた場合、「がん診断保険R」は100万円が一度受け取れるが、「勇気のお守り」は50万が2回受け取れるから。(こういうところで細かく条件変えて単純比較しにくくしてるのが保険商品の戦略)
となると3760円 VS 1036円となり、実に3倍以上の開きが出ます。

2つの保険を比べて損益を比較する場合、「生涯でいくら払うことになるのか?」を算出するのが大事。終身保険なのですから。生涯がんにならなかった場合で平均寿命85歳までで計算比較します。

「がん診断保険R」の場合
70歳で全額戻るので、持ち出しになるのは70〜85歳の15年×3760円×12ヶ月=676,800円

「勇気のお守り」の場合
30〜85歳の55年×1036円×12ヶ月=683,760円

「あれれ〜?」(コナン君風)
ほぼ同じ金額(笑)
しかも85歳より長生きすると、どんどん前者のぶが悪くなります。

ここからわかることは「がん診断保険R」は70歳以降の高い賭け金で会社の利益を巻き返すよう組まれてる保険だ、ということです。目の前のにんじん(全額返金)に惑わされると、あとでしっぺ返しをくらうわけです。

デメリットまとめ

・実際にがんになった場合にはメリットが弱い。掛け捨てがん保険の方が大きなメリットがある

・途中でやめると大きな損失

・全額返金された後の老後の掛け金が高いまま掛け捨てで継続する

この保険でメリットが出るケース

・一度もがんにならずに満期を迎え満額返金された場合。かつそこで保険を辞めた場合
→メリットというより結果としてプラマイゼロ。得られたのは保険期間の「フンワリした安心感」のみ。老後無保険なのは痛いが、70歳で新たに保険に入ろうとすると結局高い。

・加入後、比較的早期にがんになって100万円以上を受け取り保険を辞めた人
→でもそれなら安い掛け捨て保険の方がよりメリットがある。そもそもがんになったら保険はよりやめられないでしょう。

・貯蓄が苦手であるだけ使ってしまうが保険の掛け金なら継続できる人
→根本的に考えを改めた方がいいかと思うが

・月々の数千円は払えても、まとまった貯蓄がなく、いざがんになった時に治療費用を借金するしかないような状況の人

まとめると、がんにならなければプラマイゼロで、がんになった時のメリットが薄い保険です。途中でやめたら大損なので数十年続けられるかどうかが肝です。老後の掛け金が高いこともお忘れ無く。
対する掛け捨てがん保険の場合、がんにならないと掛け金まるまる無駄になるが、がんになったらメリットが大きい、という「保険」本来あるべき姿です。老後の掛け金もリーズナブルで続きます。

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